「俺さ、小学校卒業と同時に父親に捨てられて」
信じたくないけど……。
「中学に上がると同時に、母親の旧姓に変えたんだ」
佐伯くんの声からして嘘はついていないと思う。
それに……段々と思い出してくる。
いじめられたこと。
見放されたこと。
それと……楽しかった思い出。
大きな佐伯くんの中に、小学校の頃の小さな佐伯くんが苦しそうにしているように見えた。
……佐伯くんも苦しかったんだよね。
「小学生の時から、母親と父親は仲悪くて。それは、俺の勝手な事情なのに。結果的に葉山ちゃんを見捨てる形になって……」



