二人はお互いに頷き、鉄平は私の手を優しく握ってくれた。
「薫....行けるか?」
鉄平は私の目をしっかり見ながらそう問い掛けてくれた。本音を言うと怖い。ここから出なくてはいけないのは分かっているが、その先に待つものを想像するだけで足も気持ちも止まってしまう。
...だけど、鉄平が声をかけてくれるなら....鉄平が声をかけてくれるだけで勇気が出る。鉄平が側に居てくれれば安心な感じがする。鉄平だって怖いんだ。私がここでオドオドしちゃダメだよね...
「うん....行ける。鉄平と一緒なら...」
私は頑張って笑顔を鉄平に向けた。だが鉄平の表情を見て私は悟った。私は相当無理した笑顔を作っているのだと。
気持ちでいくら思っていても身体は正直なんだと私は実感した。
その証拠に身体が小刻みに震えてしまっている。気持ちでは制御出来ない、本能が震えていた。
だが、そんな私に鉄平は笑ってくれた。鉄平も無理をしている、でも私を元気つけるために頑張ってくれると感じた。
「い、嫌だよ...私はここにいる!ここから出たくない!」
先程の八尾島の行動で完全にトラウマを植え付けられた莉音は、自分の身体を抱きしめるかのように両手で両肩を掴んでブルブルと震えていた。


