山窩村


莉音の言葉に反応した守は目を見開き、座っていた莉音を強引に立たせた。


「ちょ、痛い!痛いって守!」


「どうしたの守!莉音が痛がってるって!」


「お前ら!さっさと帰るぞ!それも大急ぎでだ!」


守は鬼気迫るような感じで私達に言ってきた。血相を変えていて、顔から汗が垂れていた。


「どうしたんだ守?何をそんなに焦ってる?」


「分からないのか鉄平?スマホが圏外ってことは助けを呼べないってことだぞ?俺達は誰かに言ってこの村へ来た訳じゃない。俺達に何かあったとしても、簡単に闇に隠せられるんだぞ?」


守の一言で場の空気が凍りついた。冷静に考えればその通りだった。私達は山沢トンネルへ行くだけだった筈が、その延長線でここへ来た。誰も私達がこの村へ来たというのは知らない。

今の状況がどれ程危険なのか、私は固唾を呑みながら理解した。


「何を企んでるのか分からないが、このままアイツらのペースでこの村にいちゃだめだ。強引にでもこの村を出ないと。」


「...そうだな。早くここを出よう。莉音、薫、行けるか?」


鉄平の問いかけに私と莉音は緊張気味にうなづいた。