「エヴァン、様!?」



彼が現れると慌てて頭を下げる騎士たち。

私は驚いてエヴァンを見つめていた。

こんな時間にこんな場所で会うなんてそうそうないことだ。
エヴァンの部屋まではここから離れているし、彼も寝付けなかったのだろうか、と考える。




「話は聞かせてもらいました。皇女様の護衛は俺がしましょう。異論はありませんね?」


「え、あ、はい…。エヴァン様であれば」


「なるべくお早めに戻られるようお願い致します」



共がエヴァンだと騎士たちもさすがに言い返す言葉もないようで、すんなり受け入れてくれた。




「では行きましょうか、皇女様」




そう言うとエヴァンは私の手を取り、颯爽と皇宮の廊下を歩き出す。

静かで長い廊下には私たち2人の足音だけが響いていた。




「あ、あの…一体どこへ?」




気まずい沈黙の中、私を引っ張るような形でエヴァンはどんどん足を進めていた。




「外へ行きたいんだろう?…どうやら今日は満月らしいし、庭園の丘の上に行ったら眺めがいいと思うぞ」


「あ…うん、そうだね」




何気なく砕けた口調に繋がれた手と手…。

大きなその手から伝わる熱は夏の涼しい夜には丁度いい温かさだった。