「ごめんなさい!せっかくのお茶が冷めちゃうわね」


私はラナと侍女たちの待つ場所へ戻ると、息を切らしながら用意されたイスに座る。


「心配しましたよ皇女様。見るところ遠くまで行ってらしたのでしょう?一体どこへ行っていたのですか?」


何もかもお見通しといった風でラナは手際良くお茶をティーカップに注ぐ。
これは嘘をついても意味が無いと思った私は怒られるかなとも思いつつ、観念して正直に答えた。



「…黄金の木のところまで散歩したのよ。ラナの声も聞こえる距離だったから大丈夫でしょう?」



するとラナは動かしていた手をぴたりと止めて、心配するような、それとも今にも泣きそうな表情をして黙り込んでしまう。



「ラ、ラナ…?」



私は驚いて恐る恐る彼女の表情を伺った。



「…なるべくお1人で行動しないようにと前々から言っていたはずです…!少しでも目を離してしまった私も悪いですが、皇女様ももう少しご自分のお立場をお考え下さいませ!あなた様はこの帝国にとって大切な、大切なお方なのですから…」



ラナの気迫に側で控えていた侍女たちも表情が固くなり、雰囲気の悪い空気が漂う。
せっかくの良い天気だというのに、ここだけ今にも土砂降りになりそうで肌もぴりぴりとする感覚に陥る。
私は慌ててこの場を何とかしようと急いで口を開いた。