「いっそこのまま2人でどこか遠くへ逃げて、何のしがらみもなく過ごせたらな…」





独り言のように呟くと、抱きしめていた腕をゆっくり緩める。

見上げるとそこにはいつもの笑った顔のジョシュアがいた。



…だけど少し悲しそうな目をしていたのを私は見逃さなかった。






「…ごめんなさい。ジョシュアはこんなにも私を好きでいてくれるのに…ずっと待たせてばかりで…」






春に求婚されてからもう随分と経つ…。

アレックスの結婚のこともあるけれど、私も本気でエヴァンかジョシュア…どちらかを決めないといけない。

さっきジョシュアが言っていたようにお互い庶民のまま出会っていれば、きっと毎日楽しく普通の生活を送っていただろう…。




でもそれは夢、幻のこと…。

叶わぬ夢なのだ…。







「いいや。俺はシャルロットが決めるのをいつまでも待つよ。だからそんな顔しないで。俺は笑ってるシャルロットが好きだよ」




そう言って私の髪の毛をひと房手に取ると、そっとキスをする。





「…さ、だいぶ外にいたし、そろそろ戻らないと。シャルロットが風邪でも引いたら困るからな」


「うん…そうだね」





私はジョシュアの真剣な眼差しと、先ほどのエヴァンの反応が気になって仕方がなかった。

心の中は今見上げてる冬空のようにモヤがかかったようにすっきりしない心境だった。