何も言わずに俺が頷くと寿人は笑った。 「彼女もできたりしたんだけどね、」 「なんとなく、忘れられなくて」 夕日を浴びた寿人の顔は、俺なんかよりも大人びて見えた。 それはそうだろう。 人と関わる事を避けていた俺なんかよりも、人と触れ合い、人生を生き抜こうとした寿人の方が、何倍も大人だ。 「今なにしてるんだろう」 「会って、みたいなあ」 寿人がその話をしたのは、結局それきりだった。