「八つ当たりしちゃってごめんね。凛太郎は私よりよっぽど大人だね」



お門違いなことを考えていたら、今度は寂しげに笑う彼女。



「子どもですよ。好奇心に負けて琴音さんのこと傷つけちゃったし」

「そんなことないよ。元はと言えば私が勝手に泣き出しちゃっただけ」

「そういうところですよ、琴音さん」

「え?」

「もっと自分の気持ちにワガママでいないと。我慢のしすぎ、真面目すぎは身体に毒です。
俺の前でくらい、強がりはやめてほしい」

「そっか……そうだね」



兄ちゃんが通った道を彼女には経験してほしくない。

自分らしく人間らしくあってほしい。

素直にうなずいて「ありがとう」と笑う彼女と同じように笑って、無意識に惹かれている気持ちを誤魔化した。