ヤベェ。せつねえ。
今から振られるってわかっていて
なのに、
田所さんを想う気持ちは
こんなに消えない。
音を立てるほど
まだ、あがきたい自分に
胸が苦しい。
田所さんのパタパタと
急いで走ってくる足音が
人気の少ない廊下に
響いて聞こえてきた。
しびれたように身体が緊張する。
教室のドアが開く。
窓辺に佇んだままの俺に
田所さんが気づいて
「渋谷くん?
ごめんね。待たせて」
緊張したような表情で、
教室に入ってくる。
優しい田所さん。
おれのせいで、嫌な思いしているのに
何にも言わない。
麻美たちをかばって
俺を気遣って。
最初からおれみたいなやつには…
ああ。
胸が
痛い。