13話「初恋の始まり」





 吹雪と周は、ソファでふたりで座っていた。寄り添うぐらい近くに座る2人はどちらともなく手を繋いでいた。
 これは甘えなのか、それとも素直に「手を繋ぎたい」と思っただけなのかはわからない。けれど、彼もそれを嫌がっていないのが、繋いだ手越しに伝わってくる。彼の優しいぬくもりがとても心地よくて、吹雪は自然と口を開いていた。

 横に並ぶというのは、安心する。
 同じ視線で同じものを見ていると、人は安心するそうだ。お互いに向かい合って座ると、視線を感じ合い緊張してしまうのもあるのだろう。彼はそれをわかっているのか、自然とやっているのかはわからない。たぶん、後者だろう。
 彼のぬくもりが「大丈夫だよ」と言っているのを感じ、吹雪は昔の事を頭に浮かべながら話しを始めた。









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 吹雪は、どちらかというと大人しい性格の学生だった。
 けれど、他人の目を気にしてしまう部分があり、なるべくは友達と合わせるようにしていた。それに、クラスで何か決まらない事があれば、どんなに嫌な役割でも率先してやるようにしていた。そうしないと、自分は役に立たない人だと思われるのが怖かった。
 人に嫌われるのが怖かったのだ。


 吹雪の友達が、他の友人や先生、彼氏などの悪口を話し始めると心がギュッとしめつけられる思いがした。
 自分もこのような事を言われているのだろうか。そう思うと、不安で仕方がなかった。
 だからこそ、人の目をや口を気にして、穏便に過ごそうと、普通になろうと必死になりながら学生生活を過ごしていた。


 けれど、吹雪は本が大好きで、中学高校の頃はいろいろな世界を見せてくれる小説にハマっていった。本当ならば休み時間も読みたいぐらいだったが、それを我慢して友人との付き合いを優先していた。けれど部活は文芸部に入り、ひたすら本を読み続けた。読んだ本の感想を記録するぐらいの部活だったので、自宅や図書館なので放課後を過ごしていた。