「まずはボサボサの髪を綺麗にしてもらったり、先輩達から洋服を教えてもらったり、まぁいろいろしたよ。吹雪さんに会いに行くのに恥ずかしくないように頑張ったんだよ?」
 「ふふふ………とってもかっこよかったよ」
 「よかったー!」


 周は自分の髪に触れたり、洋服を眺めたりして心配そうに話していたが、吹雪の言葉を聞いてホッとした表情になった。


 「早くお金を貯めてギャラリーを借りたくて。ホストを少しだけやろうと思ってお店に行こうとしたら、吹雪さんに会ったんだ。その時ら驚いたよ!吹雪さんがホストに行くなんて思ってもいなかったから」
 「ははは……そうだよね」
 「だから、焦って声を掛けたんだ。他に男に取られたくないって思って。ホストの男だとしても嫌だったんだ。………その後は、吹雪さんとの関係を続けたくて、練習台になって欲しいって思い付いた事を咄嗟に言ってしまったんだ。でも、それで吹雪さんを少しずつ知っていくと、更に気になる存在になっていって…………早く自分の気持ちを伝えたいって思ったんだ。大きな会場じゃなくてもいい。小さくても俺の作品を見てもらえればいいんだって………だから、ここに吹雪さんを招待したんだよ」



 そつ言うと、周は吹雪の顔を覗き込みニッコリと笑った。そして、優しく頬を撫でながら吹雪を見つめた。
 ずっと会いたかった彼が目の前にいて、優しく微笑んで、そして抱きしめてくれていた。それだけでも幸せなことなのに、先程からの周の言葉の数々は、吹雪を期待させるものばかりだった。
 昔の出会いも、ギャラリーを開いた理由も。全てが、今の吹雪に繋がっている。
 周は自分の事をずっと考えていてくれていたのだと思えたのだ。

 そして、もしかして、今日は別れの日ではいのではないか。そう思えてしまうのだ。