「『魔法の手は温かいんですね』って、感心したように言ったんですよ」
 「え………私そんな事言ったの?恥ずかしい………」
 「俺は可愛い人だなって思ったよ。その後も真剣に俺の手を動きを見てて。本当に好きなんだなって思ったから。この人と話してみたいって思ったんだ」
 「周くん………」
 「でも、もちろんそんなに話すことなんか出来ずにその時間は終わったんだ。出来た皿は送る事になっていたから、もう会えないって思ってたんだ。だから……その……少し住所を見て、近くに住んでるってわかって。あぁ!!ストーカーじゃないからね!」
 「ふふふ、わかってるよ」
 

 少し焦ったように言う周が面白くて、吹雪は笑ってしまった。先程まで泣いていたのにこうやって笑顔になれているのは、そんな昔の事まで周がしっかりと覚えていてくれたから。
 自分が忘れてしまったのが悔しいけれど、けれど、彼がこんなにも自分を知っていたことが嬉しかった。



 「それにね、その教室の後、吹雪さん、食器買ったでしょ?」
 「うん。一目惚れしちゃったから、工房の隣にあるお店で買ったよ。大好きすぎて、沢山使ってるんだ」
 「あれ、俺の作品なんだ」
 「え、えぇ………!?そうだったの?」
 「うん。教授が置いてみろって言ってくれて。教授の知り合いとか、俺の友達とかは買ってくれたりはあったけど、俺の事を何も知らないで、作品を見て気に入って買ってくれたのは………吹雪さんが初めてなんだ」
 「そうだったんだ………」


 周はそう言うと、周はもう1度、吹雪を抱き寄せた。
 ドクンドクンッと彼の早い鼓動が吹雪の体に伝わってくる。その鼓動の音を聞いていると、不思議と安心する。
 


 「それを知った瞬間から俺は吹雪さんが気になってしまったんだ。初めての一目惚れだったと思うんだ」


 そんな夢のような言葉が耳に入ってきて、吹雪は彼の胸に顔を埋めた。
 私もきっと夜の華やかな街の中で周に出会った時から、何か特別な感情を抱いていたよ。吹雪はそんな事を思っていたのだった。