恋人は社長令嬢

埜々香が書斎を去った後、善が一人書斎に入ってきた。

兄は、大きな窓の側にある椅子に座って、じーっと沈む夕日を見ていた。

「兄貴。」

善は、隣に座った。

「兄貴もやるな。あの埜々香様と、急接近するなんて。」

「急接近?」

「俺、絶対言わない。旦那様にも、奥様にも。あと、那々香様にも、梨々香にも!」

相模原は、善に微笑みかけた。

「それは心強いな。」

「だろ?安心して、埜々香様と付き合えって。」

「……どうやら、そうもいかないみたいなんだ。」

「へっ?」

「何が、勇気を出して告白しろだよ。自分は怖気づいて、何も言えなかったくせに。」

「兄貴?」

「好きな女の、恋なんか応援して……何やってんのかな、俺。」

そう言うと、相模原はハァーと、大きなため息をついた。