入ってすぐ気づいた、そこがトイレだってことに。狭い個室には手洗い場が手前にあってその向こう側に男用の便器が、そしてその向こう側にはあたしたちが使う様式の便器があり、その上には窓ガラスがある。
結構な高さもあるが、大きさもある。
よし!あそこなら!あたしは便器に昇って何か窓ガラスを壊せるものがないか探ったがガラス窓を壊せるものはなにもない。
くっそ!掃除用具ぐらい用意しとけってんだよ!
仕方なしに腕を振りかざすと、肘で窓ガラスを割った、
ガシャン!
派手な音が聞こえ
「おい!何してる!」と外で淫行コーチの声が聞こえる。
捕まってたまるかよ。
窓に手を掛け外に出ようとしたが窓ガラスは完全に割れてなかったようで、そこに手を掛けたとき掌に傷を負った。
「って!」
でもこれぐらいなんてことない。
とりあえず逃げなきゃ。
トイレの外では物が壊れる音や怒声が鳴り響いている。きっとあの似非医者が暴れてるに違いないが。
そろりと窓の外を眺めると、
「朔羅っっ!!」
戒がトイレの外に居て、
戒!
「戒!良かった」
「朔羅!怪我はないか!?」あたしは必死に手を伸ばした。戒も同じように手を伸ばし一瞬だけ手が触れた。それだけで安心できた。
戒が来てくれたのならもう大丈夫。
「うん、大丈夫。でも薬のせいで体が言うこと聞かなくて」
「今、中の状態はどうなってる!」
「中!?あの似非医者が男共と戦ってる」
「似非医者?男か、女か?」と聞かれ
「男」と答えると
「隼人やな。ほな大丈夫やろうけど」
「お嬢、もうすぐで助けが来ます。その場所で時間稼ぎ可能ですか?五分程」
キョウスケ!お前も来てたんか。これならもう大丈夫。
あたしは大きく頷いた。
「とりあえずこれを」と窓から差し入れられたのはどこからか持ってきたのか結構な大きさのある木片で、
「それで入り口をふさいでください」と言われ、あたしは慌てて出入口に向かうと一応鍵はかけたものの、いつ壊されるか分からない。その木片でさらに出入口を塞いだ。
これで五分は持ちそうだ。



