敢えて逆光を避けているのか、そのスラリと背の高い男は作業場の出入口の扉に背を預け、腕を組んでいた。
「あ!あの似非医者!!」
以前ミラクルランドで怪我したとき御園医院で怪我の手当てをしてくれた謎のイケメン医者。医者……なんか??
「誰だてめぇ!」
一人の男が怒鳴り声を上げた。
「俺?名乗る程の者やない」
「な、何か分からないけれどやっちまえ!」すぐ近くに居た男達があの似非医者に向かっていった。似非医者は腕を組んだままひょいと器用にそれを避けると向かっていった男たちはそれぞれぶつかり床に転がった。
「客人に対していきなりその態度はないわぁ」と男は余裕の声を上げ、もう一人向かっていった男に隙を与えず顔にパンチを入れると腕を捻り上げその男がうめき声をあげている時、更にもう一人が似非医者に向かって行った、腕を捻り上げた男を遠心力の力でぶつけるとさらには倒れる前に頬に強烈な一発パンチ。男はあっけなく倒れた。
スピード感と言い、無駄のない動きといい、あいつ……やっぱ強い!
淫行コーチがこっちに走ってきた。どうやら縛り付けられたあたしを人質にでもとるのだろう。
「お嬢ちゃん、動かんといてや」似非医者は黒い革ジャンの中からメスを二本取り出すとあたしの方へ向かって振りかぶってきた。
動かんといて、って言われても!何する気だよ!
メスがかなりの勢いであたしに向かってくる。
目をつむる暇もなくあたしのロープ、腕と足にささり、あたしの体は開放された。
バサリと音がしてロープから解放されてあたしの体は自由になった。
「てか助けるんならもっとまともな方法がなかったんかよ!怖いよ!」
あたしが喚くと
「手段は選ばん方なんや。それよりその体じゃまともに戦れへんやろ。逃げろ」
確かに、今のこの状況じゃまともに戦えないけど逃げるって……
あたしは辺りを素早く眺めている最中、淫行コーチが間近に迫っていた。淫行コーチはあたしを捉えるため腕を伸ばしてきたが、あたしは自由になった足を振り上げコーチの腹に一発。腰を落としその腕から逃れると、スカを食らった淫行コーチがみっともなく前のめりになる。そしてあたしは作業場の奥に木でできた扉があることを発見して走り出した。
そこが何の場所か分からなかったけれど、少しでも時間稼ぎができたら。



