私には友達なんて居なかった。
奏汰と一緒に居すぎて友達って呼べる人なんていなかった。

でも…中学の入学式。

「はなえちゃんっ!」

「えっ。」

その子は元気な声で私を呼んだ。

「可愛い名前だねぇー!席も隣だし!よろしくね!」

太陽みたいに可愛くて眩しくて……

「よろしくねっ!!!!」

私は泣いてしまった。


おはようの後にその先の話があること。
話したいことがあること。
今までそんなことはない。

話すのはいつだって奏汰だけ。

奏汰とはクラスが違くて最近は話していない。
きっとそんなもんだ。
それに少し寂しさを感じている自分もいる。
でも奏汰も奏汰で楽しそうにやっている。

それならいっか。

「はなえ!今週の金曜日付き合って欲しいところがあるのー!!」

私と加奈子の家は逆方向で一緒にかえることはなかった。
これが加奈子と帰る初めての帰り道だった。
嬉しくて、楽しみで、まるでデートの前のような気持ちだった。