颯太たちに続いて席を立とうとした、その瞬間。
(…え)
急に背筋に下から上へとゾクゾクッと寒気が走る。
まるで、何かが走ったかのように。
《…がいの…んて…ないの…》
(…え?)
思わず体を止めてしまう。
どこからか聞こえた、その声に。
「伶士?どした?」
「あ…いや」
この声は…。
(まさか…)
辺りを見回す。
しかし、そこはいつもの教室の風景だ。
茫然と立ち尽くしてしまうと、再び颯太に声をかけられる。
「伶士、何もないなら行くぞ?もう時間だ」
「うん、わかった」
昼休みも終わりそうな時間だったので、あれよあれよと急いで移動を始める。
あの声は…昨日の朝に聞いたものと、同じ?
確かに、女の声…だったんだけど。
昨日のものと同じかどうか。
何とも曖昧で、判断しかねる。
…その時。
昨日言われたことを、ふと思い出した。
《何かあったらすぐに助けを呼んでくれ》
…鈴代は、こう言っていた。
けど、これはその『何か』に相当するのか。



