「…へ?何でそれを?」
何で昨日のこと、瞳真くんが知ってるんだ?
それとなく聞き返す。が…その返答内容から、思わぬ事実を知ってしまう。
「その男子生徒、俺のクラスのヤツ。『なずぽよにボコボコにされて動けなくなってたら、サッカー部のタチバナってヤツに助けてもらって、保健室に連れてってもらった』って、夜電話きた」
「は…」
「おまえの練習着の名前の刺繍でわかったんだって。で、椎名ってヤツなんだけど、おまえにお礼したがってる」
「…じゃなくて!なずぽよに…鈴代なずなにボコボコにされた?」
今、俺の耳、おかしかったんだろうか。
もしくは、瞳真くんがおかしなことを言ってるか。
鈴代なずなが…?
男子生徒をボコボコに…?
しかし、瞳真くんは首を傾げている。
「え?そこ問題?」
「問題だろ!女が男を…ボコボコ?!」
「え?そう?なずぽよ、格闘技やってるらしいぞ。そりゃボコボコにされるだろ」
「………」
ダメだ…。
瞳真くん、甘いマスクの超絶イケメンのくせに、天然というか、だいぶ変わってるから。
男が女にボコボコにされることをあり得ない事と思っちゃいない。
鈴代なずなが格闘技?
いや、そうだとしても、男と女の力の差ってやつは結構あるだろ。
俺も空手やってるからわかるけど。



