そして、いつからだろう。
こんなにも、比べられるのが嫌になったのは。
そんな感情を抱えたまま眠りに着き、やがて朝になる。
目が覚めた頭は、いつもよりも重たい気がした。
「…伶士、伶士!」
本日は朝練があるので、昨日よりも早い時間に支度を終えて家を出ようとした、その時。
玄関で靴を履いていると、寝起きでパジャマ姿の親父が駆け寄ってやってくる。
ちっ。何だよ…。
もしかしてまた、学校に行くなとか?
「…学校には行くから。いちいち心配しないで」
「学校に行くのは、菩提が大丈夫っていうから千歩譲って認めてやる!…だがな?危険な目に合ったらすぐに帰ってこい!いいな?!」
「危険な目…?」
そのさりげない過保護発言に、だいぶイラッとくる。
親父の言うその危険な目とは。
昨日のあのイタズラまがいの出来事か…?
あれのどこが危険なんだ!
「…そんなのいちいち気にしてられるか!…行ってくる」
イライラ混じりの返事を投げ掛け、親父をそこに置いたまま玄関を出る。
ゆっくりと閉まるドアからは「伶士!…伶士!」と、親父の呼ぶ声が聞こえていた。



