この人たちにとっては、俺の大切にしていたものなんて、通過点にしか過ぎないんだ…。
「頼智、今日は帰りが早いな」
騒がしいのに気付いたのか、親父がリビングに姿を現す。
大事な長男のお早いご帰還となれば、顔を見せに来たいんだろうか。
「おぉっー!父さん久々だ!…早速なんだけど、この間の展示プラン、斬新なアイデアあるんだけど聞く?聞く?」
「ったく、酔っ払って…」
「酔っ払ってってもプレゼンは出来ますよー?俺の才能ナメちゃいかんよ?」
「わかったわかった。…じゃあ、来るか?」
「行く!」
そうして、二人は連れ立ってその場を去る。
すれ違いざまに「伶士おやすみー!」と、兄貴が肩をポンと叩いていった。
そして、廊下の突き当たりへと消えていく。
二人はこれから…親父の書斎で、話をするのだ。
仕事の話を。
その二人の後ろ姿を見送ってから、階段を上がって部屋に戻る。
兄貴は…期待されているんだ。
親父に。
近い将来、自分の跡取りとして。
…親父がいなくちゃ、何も出来ない、出来の悪い俺とは違って。



