そして、なずなは家から去ったのだけど。
あんなに寂しくてやるせなかったはずなのに、意外と平気だった。
隣にはいない、食卓も。
夜の一人の部屋も。
平気だった。
きっと、それは…。
『伶士、また学校で!』
…あの一言があるから。
未来があると記された、その一言。
顔を上げて、前を向いていられる。
日曜日はずっと病人のように療養していたおかげで。
翌日の月曜日は、体調万全でスッキリとしていた。
…何でだろうか。
世界が変わって見えるんだ。
「…週末はすみませんでした!これからはもっと体調管理に気を付けます!」
月曜日の朝練で。
長いことお休みしていたため、キャプテンに謝罪。
キャプテンは「まあまあいいから」と、笑顔で俺の肩をポンポンと叩く。
「橘が復活して何より。それより今週末はリーグの最終戦あるから、そこで頑張ってもらわなきゃねー?リーグ優勝かかってるからな?」
「…はい!…すみませんでした!」
今一度、頭を下げると、背中がズシッと重くなる。
誰かに乗っかられてる…。



