この家を去る二人を見送り、寂しい思いが胸に残りながらも。
それは、悲しみに打ちひしがれるのではなく。
何となく、前向きな後味が残っていた。
「あの…伶士?」
「ん?」
リビングに戻ろうとしたら、後ろから兄貴に呼び止められる。
その兄貴は、ちょっとモジモジしていて、次の言葉をなかなか言い出せずにいるようだった。
「兄貴、どうしたの」
「その…ごめんな?」
「えっ?」
「この間のこと。なずなの前で昔の話しちゃって…恥かかせたかなと思って」
「………」
あ…あの時のことか…?
兄貴がなずなの部屋に無理矢理入ろうとして、俺が注意した時のこと?
兄貴は酔っ払っていた上、直後になずなにボッコボコにされるという…。
ちょっと忘れてた。
「…あの日さ。麗華にちょっとグサッとくること言われて、ヤケ酒しちゃったもんでさ?悪酔いしてた。本当ごめん」
「…別にいいよ。そんなの」
「いや、伶士、なずなと良い感じだったからさ?何か悪いことしちゃったな?なんて思って」
「良い感じ?そんなんじゃねえって」
「そう?お似合いだなと思ったけど?」



