そうして、なずなを宥めながら次々と肉を焼くのは大変だった。
…兄貴にも少しばかりか肉を取り分けてやる度に、キーッ!と怒る怒る。
やれやれ。
しかし、別れの時ってヤツは、さっさと来てしまうもので。
気付けば菩提さんはウチに来ていて、親父と母さんとおでんをつまみながら談笑していた。
なずなが、帰ってしまう。
「皆さん、お世話になりましたぁーっ!最後に高級肉なんて食わせてもらっちゃって、この上ない至福でございますっ!」
玄関でスーツケース片手に靴を履き、見送りの俺達に、頭を下げるなずな。
高級肉を堪能したせいか、この上なくご機嫌だ。
「社長、奥様、お騒がせしました」
「何も、世話になったのはこっちだから。すまないな」
菩提さんも親父たちに頭を下げている。
その様子を見ていると、またしても何だか嫌な寂しさに襲われる。
元の生活に戻れるのに…それをあまり歓迎していない自分がいた。
何だよ。このモヤモヤとした気持ち。
「伶士」
「…ん?」
そんなことを考えていたら、いつの間にかなずなが目の前にいて、ちょっと慌ててしまう。



