《…笑いたい奴らには、笑わせておけばいいさ?》
《だったら、そのまま風に吹かれようぜ?あっちはあっち、こっちはこっち》
…過去の心の痛みも、そんな言葉で楽にしてくれて。
《大丈夫だ…》
…悲しくてどうもならない時には、そう言ってくれて。
こんなに細くて小さい背中なのに。
見せてくれるその背中に、頼もしさすら感じてしまった。
こんなデリカシーのないギャルと同居警護生活なんて、どうなるかと思ったよ。
裸見られるわ、兄貴ボコボコにされるわ。
でも…お泊まり会状態で、語り明かして、話を聞いてもらって。
そういや、試合も見に来てくれたな。
悪くはない、と思った。
おかげで…兄貴との過去も、親父のことも、ふっきれて。
今なら、前を向いて歩けるような気がする。
未だに寝ているなずなの体勢を、俺が座り直して今一度整える。
ちょっと体が揺れるが、なずなは起きない。
余程、疲れてるんだろうか。
そんな事を考えると、余計に胸が熱くなって、何かが込み上げてくる。



