途端に、辺りの空気がフッと軽くなる。
張り詰めていた重力が、体から抜け去るような感覚だった。
場の空気の流れが変わった。
何かが起こった、と感じさせられるような変化だ。
《ああぁぁ…ああぁぁ…》
そこには、人間の姿を取り戻した鹿畑倫子さんの泣き声だけが響いていた。
それをなずなが黙って見守っている。
「妖化が解けた…」
そう菩提さんが呟いたのを耳にして、状況を把握できた。
そうか。
妖怪ではなくなり、ただの死霊となった。
助けられたんだ…。
《ああぁぁ…ああぁぁっ…》
しかし、鹿畑倫子さんは地に這いつくばったまま、泣き叫び続けている。
ただ、追憶された想いを抱えて、悲しんで…。
見ているこっちが切なくさせられるぐらい。
《行かないでほしかったぁぁ…一緒にいたかったぁぁ…ああぁぁ…》
「…あのさ」
黙って見守っていたなずなが、口を開く。
注意を引くように、彼女の元へ数歩足を向けた。
そんななずなの声が耳に届いたのか、鹿畑倫子さんは慟哭しながらも顔を上げる。



