《…行かないで…》
…彼女の追想、精神世界とやらの映像に釘付けだったが。
ふと、気が付くと。
(え?…あ、あれ?)
「…青鈍の鉄器・千歳緑の若葉・瑠璃紺の宝珠…」
なずなの詠唱のみが響く中。
妖怪の姿が…見当たらない?
そこにいたはずの特大サイズの妖怪がいつの間に消え去っていた。
な、何で?
そう思い、辺りを見渡す。
しかし、その姿はすぐに見つかる。
あぁ…。
消え去ったワケではない。
姿形、大きさが変わったのだ。
あのおぞましい妖怪の姿は、もうない。
代わりに…そこには。
《行かないで…行かないでぇぇ…ああぁぁ…》
座り込んで、泣き崩れている。
人間の姿の女性…。
金髪のショートカット、コートにワンピース姿の女性。
鹿畑倫子さんだ…。
声をあげて泣き崩れている彼女の姿は、透けていて、消えそうで。
それを守るかのように、白く淡い光が取り巻いていた。
バケモノ妖怪の姿から…人間の姿に戻った。
「…地平線、青丹良し…」



