もし、そうなら彼をここから連れ出す。花婿を拐ってやる。
結婚式、ぶち壊したって構わない。
…しかし、私が新郎新婦控え室で目にした光景は。
そんなものではなかった。
純白のタキシードとドレス姿の花婿と花嫁。
二人は向かい合って、話をしている。
…いや、彼はカリカリと怒っていて、花嫁はしゅんと俯いていた。
『…あぁっ!…だから!おまえは一人じゃ何も出来ないんだ!本っ当にまったく!』
『え、え、は、はい…』
『俺が…俺が傍にいないと、おまえはダメなんだ!』
それは…私が見たことのない、彼の顔。
お店で見せる、気配り上手で爽やかな彼でもなければ。
一緒にいる時に見せる、子供のように、むくれたり甘えたりする彼でもない。
『だから…一生、俺の傍にいろ』
面倒見が良い。
強く、男らしい。
『…何も言わずに、お腹の子供と一緒に俺に着いてこい』
情熱的で、熱い瞳で。
『…愛してる、美織』
『はい、士朗さん!』
『っつーか、「愛してる」で「はい!」って何?何?そこ「私も」とかじゃねえの?!何普通の返事してんのおまえ?!ねえ!』
私の知らない彼になっていた。



