『一緒に?ってか』
そう言って彼は笑う。
今日、初めて笑顔を見た。
『一人じゃ…ブッ壊れそうだしな』
それから、私達が親密な仲になるのには時間はかからなかった。
彼はきっと、自分の主張を肯定してくれる人に傍にいてほしかったんだと思う。
彼には、公式の婚約者がいるから、私達の関係は日陰のもので。
外を二人で並んで出歩くことはない。
彼が仕事の仲間とお店に来ても、お互いそんな素振りを見せることはない、秘密の関係。
会うのはいつも、私の1LDKの小さな部屋の中。
部屋に帰ると彼が待っていてくれたり、私が出迎えたり。
『あーっ。もうお腹空いたー』
『ごはん出来てるよ?』
仕事でヘトヘトの彼に、ごはんを作ってあげる。
料理は得意とは言っても、家庭的で地味なものしか作れないけど。
でも…。
『…おっ!肉じゃがとホッケじゃん!』
…彼は、喜んでくれる。
『俺、レストランの高い料理よりこういうのが好きなんだよな?』
私の大したことない料理に喜んでいる彼の顔は、無邪気な子供みたいで。
『お店のお客さん』のままだったら、絶対に見られない。



