そして、彼は一人で黙々とお酒を飲む。
気になって、声を掛ければ談笑するも。
彼はだいぶ飲んでいた。
『どうしたの?今日飲み過ぎじゃない?目が座ってるし…』
『………』
少しの沈黙の後、彼は口を開く。
『…親父が、来年結婚しろって…婚約者連れてきた』
今にも泣きそうなその表情は、今まで見たことがない。
いつもの洗練された爽やかな笑顔が消え失せていた。
『グループの傘下に入った百貨店の娘だってさ。…結局、俺は親父の言いなりで、生涯共にする相手すら選ぶ権利はないんだ…』
カウンターに顔を伏せる、その肩は震えていて。
『…一生を添い遂げる相手ぐらい、自分で選びたかった…』
脆くて、消えそうで。
放っておけなかった。
一人しておけなかった。
『…金持ちの家に生まれたからって、幸せとは限らないんだよ。むしろ地獄だ。自由がない…』
グラスを揺らし、氷の音を鳴らして呟く彼。
その声は、いつもより細く。
『…本当の幸せって、何だろな…』
探そう?
見つけよう?…一緒に。
自由も…。



