小さな小さなお店だけど、ここには大手の橘建設の社員がよく来店される。
ママが、橘建設の重役と仲良しで、贔屓にしてもらってるらしい。
彼は、上司や同僚に連れられて何度かお店に来ていたお客さん。
見た目は、とても洗練されていて、いわゆるイケメン。
背も高くて、爽やか。
『…こいつ、橘っつーんすよ!実は、グループ総帥の息子!…24だから、倫子ちゃんと同じ歳かな?』
『未来の社長を後輩に持つなんてなー?…厳しくしたら後で仕返しされそ』
『な、何言ってんすか先輩方!今は修行中の身なんですから、ご指導宜しくお願いしますよ!』
社長の息子?
確かに、お上品でただならぬオーラはあるけど。
でも、偉そうにしてなくて、上の者をそれなりに立てることが出来ている。
社長の息子なのに、先輩にきちんとお酌もして、気配りも出来て、対応に嫌味がない。
素敵だな…。
最初はその程度。
しかし、時が経つに連れて、思いが変化する。
とある2月の寒い中。
彼は一人で店にやってくる。
沈んだ表情で。
『いらっしゃいませ』
『こんばんは。マイヤーズ、ロックで』



