『心』を扱う…?
「生きている人間の声はみんなに届きますが、霊の声は我々にしか聞くことが出来ない…だから、それに耳を傾けるのが、我々の役目だと思ってます」
すると、母さんがフフッと笑う。
「…そうね。『あの人』もそう言ってた…」
そう話している間にも、追想である映像はどんどん流れてくる。
夜のネオン街、夜空…これは、すすきの?
歩道に行き交う人々、スーツ姿のサラリーマンや、ほろ酔いの若者たち。
それはやがて、動画となる。
気がつけば、映像は脳内ではなく、目の前の暗闇がスクリーンとなって写し出されていた。
本当に、映画館のように。
「…鳳来の竪琴・白金の刃・馬羅の音色・濃く現わるる花影…」
…私は、絶対。
人の前では、さめざめ泣いたりはしない。
それは、つまり。
常に自分が、この街、すすきので強く生き抜くために。
この街に似合う女でいるため。
何の取り柄もない私が、大金を稼ぐにはここで生きるしかなかった。
この街の中、店を転々としながら生きる。
そうこうしていたら、いつの間にもう24歳になっていて。
とあるビルの小さなスナックで働く。
…そこで、私は彼と出会った。



