菩提さんの声に気付いたなずな。
慌てて数歩下がると、妖怪を取り囲んでいた光は一瞬にしてサッと消える。
その拘束を逃れて妖怪は姿を現した…が。
《あッ…あァアっ…》
注目してしまったのは…崩れきってしまった顔だ。
うめき声をあげながら…嘔吐するように、次々と口の中から束になって吐き出される。
黒い羽根…。
《アァアああアァアぁァアーッ!!》
苦しみ、もがくかのように。
自由になった無数の手を目的なくあちこちに振り回している。
風圧で吐き出された黒い羽根が舞って、吹き荒れていた。
すると、口だけではなく、どこからともなくあちこちから、ドンッ!とあの黒い羽根が噴き出している。
黒い羽根の噴水だ。
その度に強い衝撃で、地面が揺れる。
「あの厨二病ヤロー…どこまでもエグいことしやがって…」
菩提さんがまたあの冷たい口調で呟いていた。
「…妖気が混じった自分の翼を、無理矢理死霊の体内に入れて妖化させるなんて…妖怪も相当苦しかったはずだ」
《助けて》
《苦しい》
そういうことだったのか…?



