辺りを見回す。
目の前の菩提さんは、何の反応もないようだ。
ただの空耳だろうか。
だが…空耳とまとめて、とても痛い目に合っているので、スルーせずにはいられなかった。
そう思っていると、また聞こえてくる。
《…すけ…て…るしい…》
助けて。
苦しい。
「あ、あの…菩提さん…」
どうしても気にかかってしまい、話さずにはいられなかった。
「…ん?どうしたの?」
「あの…聞こえないですか?」
「…何が?」
「『助けて』って…『苦しい』って、言ってると思うんです…」
「え…?」
驚いた顔を見せて、菩提さんも妖怪の姿を視界に入れる。
「伶士くん…確かに、そう聞こえたんだね?」
「はっ、はい…」
取り合ってもらえないかと、ダメもとで聞いたことなので、そうリアクションされるとは思わなかった。
ちょっとビックリした。
「助けて?苦しい?…まさか、自我が…?何で…」
菩提さんも気難しい顔になった。
ブツブツと独語も聞かれる。
そして、ハッとした顔を見せた。
「…しまった!…なずな、睡蓮華を解け!…暴発する!」



