しかし、素人の俺がそう感じたということは。
プロの二人はもちろんわかっているワケで。
「…そろそろ、だな」
次々と無数の手に飛び乗り、攻撃を仕掛けていたなずなだったが。
その手を大きく蹴って、飛び降りる。
前転宙返りを付け加えて身軽に地上に着地した。
スピードが落ちたとはいえ、なずなを追いかけることを諦めたワケではない。
妖怪の無数の手は、しつこくも地上に立っているなずなに向かって手を伸ばす。
しかし、襲いかかってくる手から逃げようとせず、いつものように偉そうに腕を組んで、その場にただ立っている。
…逃げないのか?
「…碧緑の恩寵・藤紫の御寝…」
そして、右足を音を鳴らしてダンッ!と踏み込む。
「眠れ…」
なずなの踏み込んだ右足から…光が滲み出る。
発した紫色の光は、いくつもの細い束となる。
四方に散り出し、まるでレーザーのようにそれぞれ地を這って、光速で妖怪の方へと轟音をあげて向かっていった。
そのレーザー光は、途中でそれぞれが二つに分かれ、また二つに分かれと、どんどん数を増やして進む。



