はっきりとその声が聞こえたその瞬間。
漆黒の暗闇は、瞬時に眩しいほどの純白の光へと変わる。
黒い羽根も粉々に消え去って。
…光が射した。
「あ…」
「伶士、気が付いた?」
少しずつ開けた視界の向こうには。
「わかる?大丈夫?」
「なずな…」
暗闇で、俺の名前を呼んだなずながいた。
視界がはっきりしてきた。
なずなの背中の向こうの景色は…灯りの点いていないシャンデリアが見える。
だだっ広い会場…薄暗い。
ここは…ホテルのホールの中?
…あれ。
俺、何でここに?
母さんに忘れ物届けてって言われて、着替えてタクシー乗って、ホテルまで来て…。
何となく覚えてはいるんだけど…。
…あれ?
何でそんなことしたんだ?
母さんが、忠晴がいるのに、俺に忘れ物届けろって頼むワケがない。
俺も、それをわかってるのに、何で素直に言うこと聞いてこんなところに来たんだ…?
我に返ると、疑問が次々と重なっていく。
考えてもよくわからないので、目の前にいるなずなについ聞いてしまう。
「俺…ここで何してんの?」
「…それは、こっちが聞きたいよ」
即答された。
だろうな。



