(…ここはどこだ…?)
…いや、どこかはわからないけど。
覚えてる。
そこは、また。
漆黒の暗闇のような、海…だ。
星空も何も映らない、夜の海。
夢の中…?
そこには、ただ、俺一人。
辺りを見回しても、誰もいない。
夜の海しかない。
何で俺、ここにいるんだろうな…?
宛もなく、数歩だけ歩み進めたところで。
目の前に、ハラハラと何かが落ちてくる。
足元にハラリと落ちた。
何が落ちてきたんだ?
花弁?
屈んで、それを摘まんで手に取る。
(え…?)
それは…黒い羽根。
この海と同じ色をした、漆黒の羽根。
艶があって、フワッとしている。
…え?カラスでもいるのか?
今一度、辺りを見回す。
(…あ!)
さっき見回した時には、誰にもいなかった方向に。
いつの間にか人が立っていた。
少し離れたところに、一人。
上下白い服を着た、細身の男性が一人。
こっちをずっと見ている。
何も言わずに。



