「…何だよそれ」
「でも…だから、人間ってヤツはいろんな人がいるんだなぁって思う。共感出来なかったり出来たりするしな」
「ふーん…」
「…だから、しゃちょーにもしゃちょーなりの言い訳があるんだよ。自分の譲れないモノとか、理屈では言い表せない何かがさ?」
「………」
譲れないモノ…?
親父には、親父なりの言い訳がある?
「…言い訳なんて聞きたくねえよ」
親父のことを考えるとちょっとイラッときてしまい、口調にトゲが出てしまった。
すると、なずなはフフッと笑う。
「…でもさ?しゃちょーは結局、愛人とは手を切って奥様を選んだワケだろ?…ほら。理屈では言い表せない何かがあったんじゃねえの?」
「そうじゃねえよ。親父だってじいちゃんの言いなりだったんだろ」
「まあまあ。やっぱり伶士は一回しゃちょーと話をした方が良いかもしんねえな?」
「…話すことなんか何もないって」
「そうそう突っぱねんなよ。思春期」
「思春期?…おまえもだろが」
「あはは。私に思春期なんかねえよ。だって、親父も母さんも一緒にいないし、こんな仕事やってたら、世の中への反発心なんて失せるって」



