「ち、ちょっと待って下さい」
そこで菩提さんの話を止めた俺に、その場にいるみんなが視線を向ける。
「…何かな?伶士くん」
「あ、あの…俺、その鹿畑さんとか、知らないんですけど…接触って」
その鹿畑さんとかが、俺を知っている。
いつ?どこで出会った?
さっきから考えても考えても思い出せないのだ。
「…伶士くん、11年前のこと、覚えてる?」
「え…11年前?」
何か…あったっけ?と、考え込んでいると、菩提さんは「五歳だもん、覚えているワケないよね」と笑っている。
「伶士くん、君は11年前、社長と奥様とサヤマグループのニューイヤーパーティーに参加した際、誘拐未遂に合ってるんだ」
「は…」
誘拐…未遂?
首を傾げる。
「パーティー会場から連れ出され、タクシーに乗り込む寸前で発見されて、大事には至らなかった、という話…その犯人がこの鹿畑倫子さんだったんだ」
菩提さんは「ですよね?」と、親父の顔を見る。
親父は顔を引きつらせて、深く頷いていた。
え…!
「…え?!俺、今まで一度も誘拐なんて…」
「…あるんだよこのぉっ!」
今度は逆に親父に怒鳴られた。
え…!



