「…ですが、その社長本人ではなく、その息子の伶士くんに執着した。…これには、二つのことが考えられます」
そう言って、菩提さんはひとつ、指を立てる。
「…まず、ひとつ。『迷わず社長のもとへと行こうにも、行けなかった』…です」
「行けなかった?」
「はい。社長には元々、我々の術により、霊的攻撃から身を護る結界等が施されています」
「結界…?親父に?」
そう呟くと、なずなが「しゃちょーは昔からよく狙われてんだよ」と話す。
そう…だったのか?
一緒に暮らしてるのに、全然そんな素振りもなくわからなかった。
「我々の施した術で、そんじょそこらの雑魚な連中はもちろん、ましてや女の生き霊なんて社長に近付くことすら出来ません」
菩提さんは強い口調で言い張る。
自分の術とやらに余程自信があるのだろう。
「そして、目標を変えるとなるならば、必然とその息子となったのでしょう。親子ならば血縁による霊気の波動もそっくりです。本能のままにその似た波動に引き寄せられたとも考えられます。なお、かつて接触したことのある伶士くんになったのかと。存在を認知していると、より相手に辿りやすくなりますからね」



