「伶士、落ち着け。大丈夫か」
俺の傍には、いつの間にかなずながいた。
「落ち着けって…!」
「伶士が望んだことだろ。話を聞くのは」
「……」
それは、そうだ。
でも…話を聞くのに、こんなに覚悟が必要だとは思わなかった。
「話はまだ終わってないよ。大丈夫か」
「………」
無言で頷き返した。
だけど、今の話は相当ショックで。
一気に体が熱くなって、呼吸もしづらくなって眩暈が出てきた。
相当興奮したのか。
「…しかし、おまえらよくわかったな。倫子の存在を」
さっきから、親父が淡々としていて恐い。
さすがデカい会社を取りまとめる社長というのか、開き直ってるのか。
…しかし、それすらも今は憎しみさえ覚える。
すると、菩提さんは苦笑いをする。
「もう、社長。過去の恋人多すぎます。探すの苦労しました。最後の切り札で、水口さんに話を…そこでわかったんです」
水口さん?…瞳真くんのお父さん?
それに親父は苦笑いする。
「柊斗?あいつ…」
「色々嗅ぎ回るような真似してすみません」
「それはいいってえの。…それによ、伶士を襲った悪霊がなぜ俺の愛人倫子だったのか、ってところもだ。なぜそこに着眼出来たんだ?」
「…ええ、色々なセンを考えましたよ?」
菩提さんの笑いは、苦笑いから不敵な笑みへと変わる。
まるで、なずなと同じ笑い方…。



