「しかし、まあ…俺への怨みつらみが、こんなカタチで現れるとはな…」
「…はい。伶士くんへの執着の発言から、鹿畑倫子さんが生き霊として現れたきっかけは『社長への想い』で間違いないと思われます」
「間違いない…？」
「…はい。スナックのママから話を聞いてきました。鹿畑倫子さんは、社長がご結婚で自分のもとを去られてからは、非常に悲しみに暮れていた…と。生涯独身だったのも、社長をずっと想い続けていたのではないかという話です」
「そこまでか…」
ため息をついたのち、顔を上げて俺を見る。
「伶士」
「………」
「…おまえや頼智が生まれる前の話だ」
何…だって？
母さんを裏切って、他に女を作っていた挙げ句。
その女の人も悲しませて。
それを、その一言で済ますのか…？
「…そんな問題じゃねえぇっ！」
急に怒りがこみ上げて、怒鳴ってぶつける。
どのくらい大声をあげたのかわからないが、息もきれて眩暈がした。
