まさか、この人は…!
「伶士…」
俺の名前を呟く親父は、様子を見ながらも話を続けた。
なぜか淡々としていて…俺には恐ろしさすら感じた。
《一緒にいられるから、幸せなの…》
《あなたを諦めるなんて…出来ないよ》
《…ったく、お嬢様で料理どころか掃除もしたことないんだってよ?キレイなだけで、ホント嫌になるぜ》
…その、言葉の続きを。
きっと、俺はわかっているんだ。
「…妻、美織との婚約中に、数ヶ月関係を持っていた。美織の妊娠をきっかけに結婚となった際に、別れた…」
何で…!
「けどな。…別れ際は後味悪いもんでさ。嫌だと喚かれて泣かれて…別れたその日から一切連絡をとってはいない」
「社長。そこまで暴露しなくても」
「いい、いい。下手に隠したってこの状況じゃどうせバレる。ならはっきりと伝えた方がいい」
だよな?と、親父はなずなの方を見る。
なずなは静かに頷いていた。



