だとしたら、なぜ。
なぜ俺は、親父の知り合いに、生き霊というカタチで襲われなくてはならなかったんだ?
なぜ…と、思っていたが。
話は依然として続く。
「…遺体はそのスナックのママが引き取って密葬するそうです」
そう言って、菩提さんは顔を上げて親父を見る。
「社長は…この方をどなたかご存知ですね?」
やはり…!
話を振られた親父は、俯いたまま固まっている。
そして、ゆっくりと顔を上げて頷いていた。
「…ああ、知ってる」
俺の方をもチラッと見てから、再度頷いた。
…そして、驚愕の事実が明かされる。
「この女は…鹿畑倫子とは、関係を持っていた。いわば俺の愛人だ」
「は…」
思わず声が出た。
え…愛人?
親父の愛人…?
俺も固まってしまった。
思考も、心臓も…止まったんじゃないかと思うぐらい。
恐らく、体のどこか震えてる。
「愛人…?その言い方って…」
あまりの衝撃に、出た声も震えている。
愛人という、その呼び方は。
それは…正式に、ではなく。
隠れて、秘密という匂いがする。



