『………』
『だから家には私一人。誰もいない。で、今は剣軌が保護者。うちの隣に住んでるし』
聞いちゃマズかった話でした…。
とたんに罪悪感でいっぱいになる。
陰陽師の修行から帰ってきたら、母親が故郷に帰ってた?
何?その、単身赴任から帰ってきたら、妻が他の男と駆け落ちして逃げられてしまったサラリーマンみたいな展開は。
それを小学生で味わうなんて。
『…だーから?自由にやってんの。私』
そう言って、にひひとやんちゃに笑って見せる。
『まあ?剣軌が何かとうるさいけどね?ガンガン仕事入れてくるし…あーもういや。遊ぶヒマ無し』
『菩提さんって何歳?』
『25。私より9上』
『…えっ!若っ』
どれだけ話しても、話が尽きない。
そんな話を続けているうちに、いつの間にかウトウトしていて。
いつの間にか寝てしまった。
また寝落ち。
気付けば朝になっていた。
やはり暑かったのか、なずなは寝袋から抜け出していて、中途半端に足だけを寝袋に突っ込んでいた。
それはまるで、昆虫の脱皮のように。
何なんだおまえは。



