彼女が体から離れた途端、フッと体が軽くなる。
体の自由が戻って、詰まっていた息も通り、体を庇って咳き込んでしまった。
助かった…。
「そろそろ来る頃だと思ったよ?…まさか、結界すり抜けて侵入するなんざ大胆だな」
落ち着いて顔を上げると、そんな俺を背に偉そうに腕を組んで立っている。
ピンクのモコモコのパーカーを着た、その華奢な背中。
洗いざらしのロングヘア。
紛れもなく、俺のボディガード。
鈴代なずなだ。
「何を急いでんだか知らねえけど?実体化もしちゃって。…あんたにそんなことが出来る力貸してくれんの、誰?」
そこらに転がっている彼女にそう言い放ってから、チラッと俺のいる後ろを振り返る。
「…大丈夫?」
「あ、うん…」
そう答えると、フッと鼻で笑う。
すると、再び背を向けた。
「で、さっきから質問してんだけど、答えらんないの?さっきあれだけ一緒に行こうとか何とか散々くっちゃべってたじゃん」
《…邪魔しないで…》
「…だから、生き霊のあんたをそんなバケモノにしちゃったの、誰?」
《邪魔…しないでえぇぇっ!》



