ドア一枚向こうから、そのドアをドンドンと叩いて、わーだのきゃーだの喚いている。
がっちりと鍵をかけて、後はもう無視。
ドアの向こうでどれだけ騒がれても無視を決め込んで、着替えを始めた。
(ちっ…)
《っつーか、黙れとか使用人の分際でとか!まーよくも言ってくれますわね、お坊っちゃま?!》
《金持ちの息子なんて大体そんなもんだな?平民を上から見下しやがって!》
《使用人の分際で!》
…あんなことを言うつもりはなかったのに。
あいつらみたいな傲慢な発言をするつもりはなかったのに。
これじゃ、一緒だよ…。
どこにいるのか、わからなくなる…。
「伶士さま、少し過ぎる発言ではないでしょうか」
「え…」
風呂から上がると、鈴代なずながリビングで待ち構えていて「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」と、ペコペコ頭を下げていたが。
無視していると、忠晴に「なずなさん、お風呂空いたようですよ」と諭され、「カード払いカード払い…」と呟きながら去っていった。
そして、鈴代なずながいなくなったのを見計らってからの、忠晴のこの発言だ。



