「俺は今まで、幸せになるにはある程度の地位とお金が必要だと思っていた。
いや、貧乏して、苦労した経験があるわけではないんだが。
自分がある程度金があって幸せだったから。
自分の妻や子にもそういう暮らしをさせてやりたいと思って、出世しようと頑張った」
だが、今立ち止まり考えている――。
そう士郎は言ってきた。
「羽未よ。
幸せとはなんだろうな」
珍しく士郎が真面目な顔で語ってきたが。
幸せ、と聞いて、真っ先に羽未の頭に浮かんだのは――。
帯刀と二人でコンビニに行って。
たわいもない物を二人で選んで買って。
笑いながら、エレベーターに乗っていたあの瞬間だった。
人生に、他に感動的な場面は幾つもあった気がするのに、何故、今、それを思い出すんだろう、と羽未は思う。
「羽未。
俺は、貧乏でもお前と暮らしたい気がする」
士郎のそんな言葉に帯刀とのささやかな思い出に浸っていた羽未は、ん? と思った。
待ってください。
何故、私と居ると貧乏になる設定なのですか……。
あなたの家も私の家も別に普通で貧乏ではない。
そして、あなたも私も、今現在、そこそこいい会社に勤めているではないですか。
いや、貧乏して、苦労した経験があるわけではないんだが。
自分がある程度金があって幸せだったから。
自分の妻や子にもそういう暮らしをさせてやりたいと思って、出世しようと頑張った」
だが、今立ち止まり考えている――。
そう士郎は言ってきた。
「羽未よ。
幸せとはなんだろうな」
珍しく士郎が真面目な顔で語ってきたが。
幸せ、と聞いて、真っ先に羽未の頭に浮かんだのは――。
帯刀と二人でコンビニに行って。
たわいもない物を二人で選んで買って。
笑いながら、エレベーターに乗っていたあの瞬間だった。
人生に、他に感動的な場面は幾つもあった気がするのに、何故、今、それを思い出すんだろう、と羽未は思う。
「羽未。
俺は、貧乏でもお前と暮らしたい気がする」
士郎のそんな言葉に帯刀とのささやかな思い出に浸っていた羽未は、ん? と思った。
待ってください。
何故、私と居ると貧乏になる設定なのですか……。
あなたの家も私の家も別に普通で貧乏ではない。
そして、あなたも私も、今現在、そこそこいい会社に勤めているではないですか。



