妖怪顎クイが出ましたよ、と赤くなりながら思う羽未に、
「なにやってたのよ、給湯室でー」
と阿佐子が訊いてくる。
昼休み、みんなでリラクゼーションルームに居たときだ。
「えっ?」
とまた赤くなった羽未を冷ややかに見て、阿佐子が言ってきた。
「あんた、口紅色が淡いからわかりづらいけど、気をつけないと、べったりついてたりするわよ」
ええっ? と羽未が思わず口許を拭うと、
「……あんたの口拭ってどうすんのよ。
課長が口紅つけてるわけじゃないでしょうが」
と阿佐子が言う。
やだーっと和花たちが声を上げた。
「また給湯室でー?
いいなあ、うらやましいー」
「いや、前は給湯室で蜘蛛を退治してくれただけなんだけど……。
あ、でも、ゴキブリをサッととってくれた課長は格好よかったかな」
とうっとり言うと、
「……そのあばたもえくぼみたいな状態、いつまで続くのかしらね」
と阿佐子が言ってくる。



