……秘密があります

 羽未は、ぎゅっと帯刀の腕をつかみ、
「動いたんですっ、ゴキブリの脚がっ。
 金曜日から死んでるのにっ。

 阿佐子さんがそのうち蜘蛛かなにかが()ってくだろうから置いておきなさいよって言うから、置いておいたんですけど。

 この間、大騒ぎして、蜘蛛を追い出してもらったのに。

 今度は都合よく蜘蛛のおいでを願ったので、きっとバチが当たったんですよっ。

 それでゴキブリがゾンビ化してしまったんですっ」

「……いや、それだとバチが当たったのは、ゴキブリだよな?」

 帯刀はそう言い、とりあえず、今は動いてはいないゴキブリをその辺にあった広告でつかむと、それに包んでゴミ箱に捨てる。

 ゴキブリの居た隙間にゴキブリ駆除の薬が置いてあるのが見えた。

 それを食べてひっくり返ったが、生命力が強いので、まだ少し息があったのだろう。

 羽未を振り返り、帯刀は言った。
 
「これでいいか?」