……秘密があります

 帯刀はまだロータリーに立ち、タクシーを見送っている。

 いやいやいやいやっ。

 真っ暗な部屋の中でできなかったのにっ。

 何故、今、こんな人目のある場所でできるのですかっ。

 ちょうど帰宅してきた何処かのご主人もタクシーの運転手さんもっ、通行人の人も見てましたよっ?

 もう此処でお別れという状況だからだろうかっ?
と混乱しながら、家に着き、

「ただいま」
とドアを開ける。

 パジャマでトイレから出てきた母親に眉をひそめられた。

「あらっ?
 帰ってきたの? なんで?」

 いや、なんでってなんですか、母よ……と思いながら二階に上がり。

 触れてきた帯刀の唇とか、抱きしめてきた腕とか。

 見つめてきた瞳とか。

 いろいろと思い出して、恥ずかしくなり。

 なにをどうしていいかわからずに、羽未は部屋の隅で、なにが正義かわからない駄菓子をむさぼり食った。